「生産技術を辞めて他の職種に転職したい」
「本当は生産技術になる予定は無かった」
生産技術という職種が存在することを会社に入るまで知らず、配属によってたまたま今の職場にいるという人も多いと思います。
”生産技術を辞めて新しい道で頑張っていきたい”と考えているは、何をアピールして転職にのぞめば良いのでしょうか?
今回は生産技術が他の職種へ転職する時に使えるアピールポイントについてまとめてみました。
生産技術が共通して持っている強み
私たち生産技術が他の職種に対してアピールできることは、「他の職種の人たちは経験していないけど、私たち生産技術は経験していること」です。
生産技術職がアピールできる強み
- 製造する側の現実的な視点
- 測定方法や品質基準の理解
- 技術的な資料を読み解く力
- 高品質・低コスト・短納期を満足する方法
- 幅広い人間関係を通じて得たコミュニケーション能力
生産技術は設計の作成した2D・3Dを実際の現物にするためにどんな設備・治具・型・材料が適切か知っていますし、品質・コスト・生産性を維持・向上するためにどんな仕様・構造にすれば良いかも理解しています。
発生した不具合に対しては何が原因でどのような対策をすれば改善できるのか知識・経験を持つうえ、気難しい現場の人間から最先端の技術となる研究開発の人間まで幅広い人間関係を保つコミュニケーション能力があります。
誇れるものは何もないと思っている人がいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
私たちには他の職種に無い大きな強みがありますし、それはきっと他の職種に転職した時に活かされるはずです。
生産技術からは生産技術への転職しかない、というのは大きな間違いです。
自分が経験してきたことを振り返り、何を武器として他の舞台でも戦えるのか見つめなおしてみましょう。
生産技術から転職して設計へ転職

生産技術から転職して設計へ行く場合、元生産技術としては実際に製造する側の現実的な視点を強みにできます。
- 既存技術で対応できるか、特殊な技術を必要としていないか
- 汎用設備で対応できることか
- 不良が発生しやすい形状か
- 安定生産できそうか
- 無駄な工程が発生しそうか
後工程を理解した上での設計は、現実的にできること・できないことの判断が立上げプロセスの上流工程でできるので、仕様を詰めるスピードが上がります。
また、仕様変更の削減にも貢献することが可能です。
設計者は出図後の設計変更を嫌います。
金額的にも工期的にも余計な修正コストが掛かりますし、変化点になるため、設計変更後の各種評価試験のやり直し等も必要になります。
こういった地味な問題を解決できることも、元生産技術ならではないでしょうか。
生産技術が設計へ転職する時の弱み
逆に元生産技術が弱みになりそうなのは、製品全体を俯瞰した機能の成立性やCAD操作です。
CAD操作は慣れの問題なので潰しておきたいところですが、製品の全体像をイメージしながら仕事を進めていくことは、生産技術にとって慣れていないことだと思います。
業務の関係上、どうしても個別部品の安定生産にフォーカスしてしまいます。
そのため、
- 今立ち上げている部品がアセンブリ後にどこに取り付けられて、どんな役割を果たすのか
- アセンブリ後に評価試験をクリアできるか
- 相手部品との組付け・組外しは問題ないか
など製品単体からは読み取れない問題を発見して解決していく力が必要になります。
生産技術側からすると「なんだこのモデル…」と思うことが多々あると思いますが、それには設計が苦労して考え抜いた結果であったりすることが多いです。
生産技術から設計に転職する場合は
「どんな機能を必要とする製品なのか」
「なぜこの形状・材質なのか」
「なぜこの試験が必要になるのか」
などの疑問を潰して知識として蓄えていれば、設計になっても苦労する点は少なくなるかもしれません。
- 生産を考慮した設計ができれば重宝される
- アセンブリした状態で各部品の機能的役割を理解できる必要がある
生産技術から転職して品質保証・品質管理へ転職

怒られるかもしれませんが、生産技術から品質関連部署への転職は割とイージーです。
基本的には図面を読み解く力があり、測定ツールが満足に使えれば品質部署に転職するための大きな障害はありません。
品質保証の仕事は客先・取引先の品管部門との窓口になり、社内製品の品質を確認すること。
元生産技術としては、そこに品質管理の弱みをカバーできること、付加価値を加えることができることをアプローチすることが有効です。
品質管理・品質保証の人たちは品質を見極める立場にいながら、製品のことをよく知らないことが多いです。配属当初から品質部署にいる人ほどその傾向が強い傾向があります。
生産技術を経験してきた立場であれば、「なぜこんな人が品質をチェックする立場なんだ」と思うこともあったと思います。
生産準備を経験して製造現場を知っている品質保証であれば、品質NGとなっている問題点の原因究明や、それに対する対策案などを提案できると大きな強みにになります。用意された基準に対してチェックするだけであれば誰でもできる仕事ですが、結果に対して的確なアドバイスができると品質保証の中でも一目置かれた存在です。
以前の職場にも一人だけそのような人がいましたが、各部署から仕入先まで信頼は厚く、「○○さんが言うなら…」といわれるほどの存在でした。
そんな転職しやすい品証・品証ですが、身に着けたいのは測定機器の取り扱い関係ですね。
繊細な製品だったり寸法公差が0.01㎜以下のものになると、特殊なツールや指定の測定機器を使用することがあり専門性が求められます。時には測定用のプログラムを作成することもあります。
普段から測定専用ツールを触ることは機会が無いと思いますが、せめて一般的な測定ツールは一通り使えるようになっていたいですね。この点をクリアすることができれば製品から製造の背景をリアルに想像できる品質管理として他の人間と大きな差をつけることができます。
- 「結果」という製品から「過程」となる製造工程を想像できる
- 品質改善の提案ができるとレベルの高い品管・品証になれる
- 一般的な測定ツールは問題なく触れるようになっておきたい
生産技術から転職して技術営業へ

モノに向き合っているよりも人に向き合っている方が好きであれば技術営業がおすすめです。
生産技術で知り得た経験や技術を決して無駄にすることなく、自分の得意とするコミュニケーションを活かした職種で活躍できます。
通常の営業であれば客先に対して提案できるものは生産技術の現実と異なる場合が多く、納期やコストなど成立困難なものが中には存在します。
仕事を手にするために客先の要件を聞きつつも、こちらの対応できる現実的なラインを把握しておくことがベストですが、生産準備側の経験が無いので判断が難しいのが現状です。
社内に持ち帰って確認をとることはもちろん必要ですが、商談の段階である程度の
- 生産の難易度
- コストが大きいポイント
等を念頭に置いて話ができると、元生産技術としての強みを活かすことができると思います。
営業という職種はAIにとって代わるといわれる昨今ですが、事務面は別として、技術面ではまだまだ人の手が必要です。
長い期間活躍できる可能性があるため、幅広い人間関係で培ったコミュニケーション能力を存分に発揮できる場は営業がおすすめです。
- モノよりも人を相手に仕事をしたいのなら営業がおすすめ
生産技術から転職して購買へ転職

なかなかレアなケースだと思いますが、生産技術から購買部門へ転職する道もあります。
私は生産技術から別の会社の生産技術へ転職した身ですが、実は他の道へ進む可能性も探してました。転職エージェントに相談すると持ってきてくれた求人が某メーカーの購買部門の募集案内。
内容を見ると未経験でもいいから図面を読める人が欲しいという中身で、こんな道もあるんだなと始めて知りました。
その時は既に本命にしていた求人の最終面接を控えている状況だったので、選考の進捗具合から見送ったのですが、もし選考が進んでいない状況だったら選択肢の一つにしていた求人です。
まさに生産技術として積んだ経験・技術の一部を強みできる例ですね。図面が読める、という点では適正としては設計の方が強いかもしれませんが、生産技術でも戦える可能性は十分あります。
仕入れ先とのやり取りなどで培ったコミュニケーション能力は購買でも活躍できるので、思いきって全く異なる職種に移ってみたい場合は転職先との一つとして考えてみたい職種です。
- 技術的な能力を購買部門で欲している企業もある
生産技術から転職して研究開発へ

研究開発への転職はふと頭によぎる選択肢の一つですね。
特に院卒でバリバリ研究してきたのになぜか生産技術として働いている人は他の人よりも思うところがあると思います。
生産技術から研究開発職への転職は難しい選択肢の一つですが、実現できる可能性は十分あります。
転職、というわけではないですが、以前の職場で生産技術から研究開発に異動した人が実際にいました。新材料や新技術を用いて量産プロジェクトを始動する前に事前にトライ作業で検証する必要があり、研究開発部門と連携している流れで異動したパターンです。
また、年齢が若いのであれば第二新卒枠で転職できる可能性も十分にあります。実際に会社に入って2年目の時に生産技術に配属された同期が他社の研究開発部門に転職していったので、不可能なことではありません。入社した会社をすぐに辞めるというのは良くないと言われますが、学生時代に研究してきた知識が薄れない間にとっとと転職してしまうのが研究開発部門へ転職するための楽な道かもしれません。
生産技術と研究開発は一見遠く感じがちですが、各社の求人を見ると「研究開発(生産技術)」など表記されている場合もあり、会社によっては近い存在だったりします。
チャンスが0だとは思いません。生産現場で感じた疑問や問題を研究開発時点で解決、発展したいという強い思いがあれば転職も成功に近づけるはずです。
- 年齢が若いほど転職できる可能性は高くなる
気づいていないだけで生産技術しか持っていない強みがある
もう一度簡単にまとめると以下の内容を強みにできます。
- 製造する側の現実的な視点
- 測定方法や品質基準の理解
- 技術的な資料を読み解く力
- 高品質・低コスト・短納期を満足する方法
- 幅広い人間関係を通じて得たコミュニケーション能力
最初にも言いましたが、私たちの強みというのは他の職種にはない経験や知識です。
生産準備で得た経験を必要としている職種は必ず存在しますし、異職種に転職することは自分自身の自分のキャリアを高めることにもなります。
自分の理想通りに転職するというのは簡単な話ではないですが、他の道で挑戦していきたいという思いが強いほど現実になるものです。
ただ、企業側が中途採用を欲する目的は即戦力を得ることなので、職種未経験者を採用する可能性は低いです。
転職前には転職したい職種の業務を経験したり、関わったりして知見を身に着けておきたいですね。
また、20代であればやり直しがききやすいので、年齢が若いほど他職種へ行けるチャンスは上がります。
20代の転職に特化したエージェントサービスもあるので、若いうちに相談してみることをおすすめします。
外部リンク:20代・第二新卒・既卒向け転職エージェントのマイナビジョブ20’s
年をとればとるほど「もっと早く動いていれば…」と思うことは多いです。一度敷かれたレールから脱線するには大きなエネルギーがいりますが、力を振り絞って行動してみましょう。
